B君 男子 16歳

ワーキング・メモリートレーニングの結果報告

B君(16歳)はワーキング・メモリートレーニングを**-**の間実施し、25回のトレーニングを全て完了しました。

B君によると、得意なエクササイズは<入力モジュール>であり、苦手なエクササイズは<回転ドット>とのことでした。トレーニングは、数が増えて難しくなった後半が最も大変だったと言っていました。B君は、強い意志のもと、最後までトレーニングをやり遂げることができました。

トレーニングの結果

B君のトレーニング結果は、①ワーキング・メモリーのインデックス、②評価スケールによるご本人の行動アセスメント、そして③ラップアップセッションで示されたトレーニング効果の3つの側面からわかります。

ワーキング・メモリー・インデックスとは

ワーキング・メモリーの容量は、トレーニング期間中に定期的にいくつかのエクササイズの結果をもとに計算され、ワーキング・メモリー・インデックスとして示されます。ワーキング・メモリーの改善(インデックスの向上)は、トレーニングの開始時に計算されたインデックス(開始時のインデックス)とトレーニング期間中に得た最高のインデックス(最高インデックス)とを比較することで計算されます。ワーキング・メモリートレーニングを完了した人の平均的な改善は23点です。ここで重要なことはインデックスは、ワーキング・メモリーを測定するための手段に過ぎず、日常生活場面で使われるワーキング・メモリーへの直接的なトレーニング効果に対応するものではないということを念頭においていただくことです。

B君の開始時のインデックスは113点であり、同年代でワーキング・メモリー障害のない方の平均=92よりも勝ると考えられます。トレーニング期間中にB君は、最高インデックスとして175点をマークし、これは、62点の向上となります。これはワーキング・メモリートレーニングを受けた他の人と比べて大変素晴らしい改善であると考えられます。

評価スケールによる保護者の行動アセスメント

トレーニングの前後に保護者が、いくつかの質問に回答することで、B君の不注意と多動性・衝動性の程度に減少が見られたかを査定します。その値が小さければ小さいほど、症状がより緩やかなことを示します。トレーニング効果を測定する方法の一つとしては、トレーニング後に記入された行動アセスメントとトレーニング前に記入された行動アセスメントを比較することです。症状の程度がより大きな減少を示しているほど、トレーニング効果が大きいことを示します。保護者の回答の変化に加え、トレーニング効果におけるその他の側面、ラップアップ・セッションで示されたB君と保護者の方からのトレーニングに対する意見も考慮にいれます。

変化の信頼性を保つために、B君の症状の評価は、ワーキング・メモリートレーニングを実施した方々と比較して検討されます。以下の表は、そのグループと比較して決定されたB君の症状改善の程度を示したものです。

保護者の方の評価

保護者の方に記入いただきます事前・事後のアンケートの結果ですが、注意、多動性・衝動性のいずれの項目においても大幅な改善が見られました。

ラップアップ・セッションについて

トレーニングを終えて、B君は、「トレーニングはそこまできつくはなかった」、「結構初めの頃からいろいろ試してきて、これって気づいてからはそのやり方で解いていた」、「入力モジュールでは3つ4つに区切ってやった。無理やり日本語にしてやった」、「RoboRacingはやったりやらなかったりした。ご褒美は特になしでやれた」、「今は学校が始まり忙しくもなり、区切りとしてはもう終わりでいいかなと思っている」、「効果はまだ学校が本格的に始まっていないので分からない。ただ、今日TOEICのテストだったが、長い時間聞いていてやれたかな」などと言っていました。

保護者であるお母さまからは、「思っていたより時間がかかり学校との両立が大変だった。後半リズムよくできなかった。その意味では春休みにやってもよかったかなと思った」、「本人は嫌がらずにやれた。しかし、時間がかかるようになってきてからは気合を入れないと始められないこともあった」、「苦手なエクササイズとそうでないものとがはっきりしており、それは最初から最後まで変わらなかった」、「満足度としては60%~70%くらい」などといったコメントをいただきました。お母さまがB君を大きな目で見守っていて下さり、必要に応じて声をかけ、励ましてくださったことがB君にとって大きな励みとなったと推測されます。

B君に見られるトレーニング中の効果は、

ノートをキレイに取れるようになったこと

自分から進んでまじめに、丁寧に取り組めるようになったこと

集中力が持続するようになったこと

などです。