Dさん 男性 28歳
ワーキング・メモリートレーニングの結果報告
Dさん、28歳、はワーキング・メモリートレーニングを**-**の間実施し、25回のトレーニングを全て完了しました。
Dさんによると、得意なエクササイズは<数字><かくれんぼ>であり、苦手なエクササイズは<キューブ>とのことでした。トレーニングは中盤に中だるみとパソコンの不具合が重なり、ゆっくりペースになってしまったとのことです。しかし、Dさんは、強い意志のもと、最後までトレーニングをやり遂げることができました。
トレーニングの結果
Dさんのトレーニング結果は、①ワーキング・メモリーのインデックス、②評価スケールによるご本人の行動アセスメント、③ラップアップセッションで示されたトレーニング効果の3つの側面からわかります。
ワーキング・メモリー・インデックスとは
ワーキング・メモリーの容量は、トレーニング期間中に定期的にいくつかのエクササイズの結果をもとに計算され、ワーキング・メモリー・インデックスとして示されます。ワーキング・メモリーの改善(インデックスの向上)は、トレーニングの開始時に計算されたインデックス(開始時のインデックス)とトレーニング期間中に得た最高のインデックス(最高インデックス)とを比較することで計算されます。ワーキング・メモリートレーニングを完了した人の平均的な改善は23点です。ここで重要なことはインデックスは、ワーキング・メモリーを測定するための手段に過ぎず、日常生活場面で使われるワーキング・メモリーへの直接的なトレーニング効果に対応するものではないということを念頭においていただくことです。
Dさんの開始時のインデックスは91点であり、同年代でワーキング・メモリー障害のない方の平均=100とほぼ同等であると考えられます。トレーニング期間中にDさんは、最高インデックスとして128点をマークし、これは、37点の向上となります。これはワーキング・メモリートレーニングを受けた他の人と比べて大変素晴らしい改善であると考えられます。
評価スケールによる行動アセスメント
トレーニング前後でのアンケート調査よりDさんの不注意と多動性・衝動性症状の査定が行われました。その値が小さいほど、症状がより緩やかなことを示します。トレーニング効果を測定する方法の一つは、トレーニング後に記入された行動アセスメントとトレーニング前に記入された行動アセスメントを比較することです。症状減少の程度が大きいほど、トレーニング効果が大きいことを示します。回答の変化に加え、トレーニング効果におけるその他の側面、ラップアップ・セッションで示されたDさんからのトレーニングに対する意見も考慮にいれます。
変化の信頼性を保つために、Dさんの症状評価は、ワーキング・メモリートレーニングを経験された他の方々の変化と比較します。以下の表は、他の18歳以上の方々と結果をグループレベルで比較して算出されたDさんの症状改善程度を示したものです。
ご本人の評価合計点
ご本人に記入いただきました事前・事後のアンケートの結果ですが、不注意に関しては大幅な改善が見られました。また、多動性・衝動性に関してはやや改善が見られました。
ラップアップ・セッションについて
トレーニングを終えて、Dさんは、「結構トレーニングとしては負荷がかかり、いいトレーニングだった。トレーニング自体は思っていたよりもよかった」、「集中力が向上した気がしている」、「エクササイズがバラエティに富んでいたので、効いているのかなと思う」、「何となく漠然と自分が得意なものと苦手なものとが分かった」、「トレーニングに対する満足度としては70点。トレーニングの進行具合がゆっくりだったので、もう少し固めてやれれば80~90点になったと思う」、「自分の中で何かが具体的に向上したという感じはない」、「意識の持ち方を変えてみる、頭のどの部分を使っているのか、頭の部位を意識してトレーニングに取り組んでみた」、「ひとまとまりの数を3個、4個、5個と分けてみる、数の変更を試みながらトレーニングをしていた」などと言っていました。Dさんは、日々いろいろな試みをしながらトレーニングに励み、ご自身なりにトレーニングを楽しんでいたことが窺えました。
Dさんに見られるトレーニングの効果は、
集中力の向上
(仕事をしていて休憩を必要とする間隔が長くなっている、やらなくてはいけない時には長く座っていられるようになった。)
文章を見直す回数の減少
(文章作成の際にミスが多いため、何度も見直す必要があったが、それが多少改善された。)
マルチタスク(同時並行での作業)の実施
(近い未来、直近数日の間に複数の案件を同時並行して実施することはできているが、それが長いスパンになると未だ難しい)
などです。