KIさん 男性 50歳
ワーキング・メモリートレーニングの結果報告
KIさん(50歳)はワーキング・メモリートレーニングを**-**の間実施し、25回のトレーニングを全て完了しました。
KIさんによると、得意なエクササイズは<格子><数字>であり、苦手なエクササイズは<キューブ><3D立方体>とのことでした。トレーニングは最初慣れるのに時間がかかり重かったが、次第に慣れてきて、最後の1週間は毎日やっていたとのことです。KIさんは、強い意志のもと、最後までトレーニングをやり遂げることができました。
トレーニングの結果
KIさんのトレーニング結果は、①ワーキング・メモリーのインデックス、②評価スケールによるご本人の行動アセスメント、③ラップアップセッションで示されたトレーニング効果の3つの側面からわかります。
ワーキング・メモリー・インデックスとは
ワーキング・メモリーの容量は、トレーニング期間中に定期的にいくつかのエクササイズの結果をもとに計算され、ワーキング・メモリー・インデックスとして示されます。ワーキング・メモリーの改善(インデックスの向上)は、トレーニングの開始時に計算されたインデックス(開始時のインデックス)とトレーニング期間中に得た最高のインデックス(最高インデックス)とを比較することで計算されます。ワーキング・メモリートレーニングを完了した人の平均的な改善は23点です。ここで重要なことはインデックスは、ワーキング・メモリーを測定するための手段に過ぎず、日常生活場面で使われるワーキング・メモリーへの直接的なトレーニング効果に対応するものではないということを念頭においていただくことです。
KIさんの開始時のインデックスは84点であり、同年代でワーキング・メモリー障害のない方よりもやや低いと考えられます。トレーニング期間中にKIさんは、最高インデックスとして103点をマークし、これは、19点の向上となります。これはワーキング・メモリートレーニングを受けた他の人と比べて素晴らしい改善であると考えられます。
評価スケールによる行動アセスメント
トレーニング前後でのアンケート調査よりKIさんの不注意と多動性・衝動性症状の査定が行われました。その値が小さいほど、症状がより緩やかなことを示します。トレーニング効果を測定する方法の一つは、トレーニング後に記入された行動アセスメントとトレーニング前に記入された行動アセスメントを比較することです。症状減少の程度が大きいほど、トレーニング効果が大きいことを示します。回答の変化に加え、トレーニング効果におけるその他の側面、ラップアップ・セッションで示されたKIさんからのトレーニングに対する意見も考慮にいれます。
変化の信頼性を保つために、KIさんの症状評価は、ワーキング・メモリートレーニングを経験された他の方々の変化と比較します。以下の表は、他の18歳以上の方々と結果をグループレベルで比較して算出されたKIさんの症状改善程度を示したものです。
ご本人の評価合計点
ご本人に記入いただきました事前・事後のアンケートの結果ですが、不注意、多動性・衝動性のいずれの項目においても大幅な改善が見られました。特に注意に関してはかなりの項目で何かしらの変化を実感しているようです。
ラップアップ・セッションについて
トレーニングを終えて、KIさんは、「当初計画していたよりも時間がかかってしまったが、やってよかったと思う。在宅で何か一つのことを完結したのは50年間で初めてであり、すごくありがたい」、「トレーニングに対する満足度としては100点、プログラムは素晴らしかった」、「話の要点が分からなかったのが、今はそれが少し区別されてきているなど自分なりには変化があった気がしている」、「他のことをやっているとトレーニングの存在そのものを忘れていることはあったが、途中でトレーニングが嫌になるようなことはなかった。コーチコールがあったのでやらなくてはと思い出せた」、「司会をやっていることもあり、音声情報が覚えやすいんだなぁと改めて感じられた。特に意味のない音だけ、絵柄だけであっても覚えることに抵抗はなかった」、「上級編をもっと安めで作ってもらい挑戦したい」などと言っていました。KIさんは、日々いろいろなことを考え、感じながら、トレーニングに励み、無事トレーニングを終了することに成功しました。また、ご自身なりに工夫をこなしながらトレーニングを楽しんでいたことが窺えました。
KIさんに見られるトレーニングの効果は、
複数のことに対する集中力の向上
(パネルディスカッションで横槍が入っても集中して質問に答えられた。
学校時代の同窓会の時に、複数の人からバラバラに質問されても答えられた。)
集中力の持続
(いったん始めたものを最後までやり通せるようになった。)
記憶力の向上
(話を聞いていて要点が記憶に残りやすくなった。)
切り替えの速さの向上
(原稿などの仕事の際に、1つの仕事が終わっても以前は3日間くらい次の仕事に取り掛かれなかったのが、今は他の仕事に向かえるようになってきている。)
何事にも段取りがあるということが認識できるようになったこと
などです。