Tさん 男性 41歳

ワーキング・メモリートレーニングの結果報告

Tさん(41歳)はワーキング・メモリートレーニングを**-**の間実施し、25回のトレーニングを全て完了しました。

Tさんによると、得意なエクササイズは<数字>であり、苦手なエクササイズは<混沌>とのことでした。トレーニングはデモから本番に移り、急に難しくなった前半が最も大変だったが、次第にやることが楽しくなり、もっともっとやりたいという気持ちが強くなってきたとのことでした。Tさんは、強い意志のもと、最後までトレーニングをやり遂げることができました。

トレーニングの結果

Tさんのトレーニング結果は、①ワーキング・メモリーのインデックス、②評価スケールによるご本人の行動アセスメント、そして③ラップアップセッションで示されたトレーニング効果の3つの側面からわかります。

ワーキング・メモリー・インデックスとは

ワーキング・メモリーの容量は、トレーニング期間中に定期的にいくつかのエクササイズの結果をもとに計算され、ワーキング・メモリー・インデックスとして示されます。ワーキング・メモリーの改善(インデックスの向上)は、トレーニングの開始時に計算されたインデックス(開始時のインデックス)とトレーニング期間中に得た最高のインデックス(最高インデックス)とを比較することで計算されます。ワーキング・メモリートレーニングを完了した人の平均的な改善は23点です。ここで重要なことはインデックスは、ワーキング・メモリーを測定するための手段に過ぎず、日常生活場面で使われるワーキング・メモリーへの直接的なトレーニング効果に対応するものではないということを念頭においていただくことです。

Tさんの開始時のインデックスは91点であり、同年代でワーキング・メモリー障害のない方と同等だったと考えられます。トレーニング期間中にTさんは、最高インデックスとして109点をマークし、これは、18点の向上となります。これはワーキング・メモリートレーニングを受けた他の人と比べて素晴らしい改善であると考えられます。

評価スケールによる行動アセスメント

トレーニング前後でのアンケート調査よりTさんの不注意と多動性・衝動性症状の査定が行われました。その値が小さいほど、症状がより緩やかなことを示します。トレーニング効果を測定する方法の一つは、トレーニング後に記入された行動アセスメントとトレーニング前に記入された行動アセスメントを比較することです。症状減少の程度が大きいほど、トレーニング効果が大きいことを示します。回答の変化に加え、トレーニング効果におけるその他の側面、ラップアップ・セッションで示されたTさんからのトレーニングに対する意見も考慮にいれます。

変化の信頼性を保つために、Tさんの症状評価は、ワーキング・メモリートレーニングを経験された他の方々の変化と比較します。以下の表は、他の18歳以上の方々と結果をグループレベルで比較して算出されたTさんの症状改善程度を示したものです。

ご本人の評価合計点

ご本人に記入いただきました事前・事後のアンケートの結果ですが、注意、多動性においては大幅な改善、衝動性においては改善が見られました。

ラップアップ・セッションについて

トレーニングを終えて、Tさんは、「1つ1つのエクササイズが頭に負荷をかけているように感じられた」、「トレーニングを終えて、日常生活でも我慢強くなった、落ち着いて生活できていると感じた」、「トレーニングは毎日朝起きて、1番にやるように心がけていた」、「トレーニングの満足度としては85点かな」、「数字を反対に答える問題では、いくつかの固まりに区切り、声に出したり、空で書いたりして行っていた」、などと言っていました。Tさんは短期間の間にトレーニングを終了することに成功しました。また、ご自身なりに工夫をこなしながらトレーニングを楽しんでいたことが窺えます。

Tさんに見られるトレーニング中の効果は、

物事を注意深く見ながら進められるようになったこと

(考える際、何かの動作の際にも慌てなくなった)

与えられた時間内に集中して取り組めるようになったこと

(以前よりも時間がたつのがゆっくり感じられている)

集中力の向上が見られたこと

頭を使えている感じがすること

長い文章を読めるようになった、思考が持続するようになったこと

体が疲れにくくなり、気持ちのよい疲れになったこと

イライラしたり、癇癪を起すことがかなり少なくなったこと

対人関係においても相手を良い面をみるようになったこと

などです。